高級ワイン市場は2023年第2四半期も、調整局面を迎えました。バイヤーは価格に敏感になっており、その為2021年から2022年の高騰期をリードしていたブルゴーニュとシャンパーニュが最も大きく下落を記録しました。2022年のボルドーアン・プリムール・キャンペーンでは、いくつかの素晴らしい新種のワインが市場に登場したものの、価格の上昇は短期的なパフォーマンスの不安定さを意味するとも予測されます。皆さんもご存じのとおり高級ワイン投資とは長期投資であり、現在の価格はほんの数年前に比べると高騰しており、厳密にいえば2020年に始まった高騰以前から、すでにその兆候はみられていました。よって長期的な視野を持つ人々にとって、現在の価格下落はより魅力的な購入機会を意味するものであるとも考えられるでしょう。
-2.20%
カルトワインインベストメント、第2四半期のトータル・リターン。米国産ワインが業績の足を引っ張りましたが、後にローヌおよびその他の地域のワインの好業績によって一部相殺されました。
+2.53%
カルトワインインインベストメント・レスト・オブ・ワールドの業績は、より広範囲のマーケットにおいてその成長率を上回りました。
+8.36%
カルトワインインベストメントの設立(2009年)以来の年平均成長率は、当社の広範囲にわたる高級ワインに関する深い知識と、独自の定量分析に裏打ちされた、長期的なパフォーマンスに裏打ちされた結果といえるでしょう。
高級ワイン市場2023年 第2四半期パフォーマンス
高級ワイン市場は第2四半期を通じて不安定な状況が続き、カルトワインズグローバルインデックスで測定した四半期ベースの下落率は-1.66%を記録しました。直前の上昇のペース(2021年1月から2023年1月までの2年間のリターンは+32.85%[1])を考えると、買い手がより慎重に選択する様になり、価格が横ばいかあるいは少し下落したこの一時的な調整期が起こったのも驚きではありません。
この兆候の理由の一つに、Q2で最大の不振産地であるブルゴーニュとシャンパーニュが、2021-2022年のブームで主導権を握ったという事実に理由があります。ボルドーのアン・プリムール(EP)キャンペーンは、当四半期において市場の注目を集めました。バイヤーが価格設定を見直し、高品質な2022年の新ワインに備えるため、産地市場全体の取引が活発化したのです。このため、通常堅調なカルトワインズ・ボルドー指数が、四半期の最終月に1.22%下落するという波乱が生じました。2022年にリリースされたEPの価格が高騰したため、このキャンペーンの評判は散々なものとなった一方で、一部の生産者は過去最高の批評家スコアを記録したことで需要喚起を促し、これらのワインの長期的なパフォーマンスを促進する追い風になるでしょう。
カルトワインUSA指数は、時に特異な動きをする指数として知られていますが、四半期をプラスで終えた唯一の産地となりました。 ロス・カーネロスAVAのハイド・ド・ヴィレーヌ、カーネロス・シャルドネなど、通常の最高級の銘柄・コア・グループ以外の高品質ワインが業績をリードしました。
1年での違い

マクロ市場の概要
世界のマクロ経済情勢は見方によって、コップ半分も入っている、あるいはコップ半分が空であるかのどちらかだと、たとえられるでしょう。インフレ率の低下と、米国や他の主要国の雇用統計の堅調さが楽観的なムードとなり、米国はもとより他の先進国の株式市場の押し上げに貢献しました。中国では良好な成長データが発表され、主要貸出金利が引き下げられたことで、アジアの株価指数が上昇しました。日本株は外国人投資家からの強い関心が追い風となり恩恵を受けました。
しかし、米国株の上昇はほとんどハイテク株によるもので、その他の市場はほぼ横ばいで推移しました。米連邦準備制度理事会(FRB)のさらなる利上げが控えているため、今後の上昇の持続性は不透明だと考えられるでしょう。
英国のインフレは依然として頑強さを保ち続け、イングランド銀行は6月に金利を再引き上げ、引き締め政策を長期化する可能性があると考えられています。この見通しにより、FTSEはアンダーパフォームとなり、英ポンドは米ドルや他の通貨に対して価値を高めました。
このため、セカンダリー・マーケットに出回る多くの高級ワイン銘柄は、英国以外のバイヤーにとっては割高になり、英国の輸入業者やバイヤーの購買力に拍車をかけ、特に産地から直接入手する場合の購買力にも弾みをつける結果となりました。

カルトワイン投資実績
カルトワインの投資パフォーマンスは、第2四半期を2.20%ダウンで終えました。当社の保有するシャンパーニュと米国ワインが最も業績に影響を与えたと思われます。この落ち込みの期間を、上昇局面では入手困難な厳選ワインを購入する絶好のチャンスと、我々カルトワインインベストメントは考えています。これらのワインは長期的な展望では、アウトパフォームをもたらすと同時に、中には現在進行中のボラティリティでパフォーマンスを落としたワインもあります。
第2四半期にはその他の地域(ROW)でのパフォーマンスが改善し、プラスのリターンを記録しました。スペインやチリなどROWの多くの産地は、ブルゴーニュ、シャンパーニュ、米国といった集中度の高い市場に比べて魅力的な価値を持つワインを数多く提供しており、当社はこの様な上昇の可能性を秘めた、低リスクのワインをいくつか発掘し、仕入れる事に成功したこともここに特筆すべきでしょう。


カルトワイン投資パフォーマンス第2四半期:-1.67%|YTD:-1.16
第2四半期、カルトワインインベストメントのボルドーの業績は低迷を記しました。その一因のひとつにはまず高級ワイン市場全体の低迷、さらにそこへボルドーアン・プリムールによる価格乱高下がもう一つの原因として考えられる事です。
年に一度のEPキャンペーンは、コレクターや投資家が新たな購入スペースを確保するために在庫を移動させるため、しばしば地域市場を揺るがすことがあります。高品質の2022年産ワインがリリースされたことで産地の取引は活発化し、さらにはバックビンテージの価格変動も引き起こしました。
例えば、シャトー・トロット・ヴィエイユの2010年ヴィンテージは18.9%下落を記録しましたが、これはおそらく需要が高得点の2022年の新リリースにシフトした為だと思われます。ワイン・アドヴォケイト誌で満点を得た、シャトー・ペトリュスの2020年も17.5%下落しました。しかし、どちらのワインも長期的な熟成に強いヴィンテージのものであるため、時間が経てば最近の下落分を取り戻し、おそらく下落以前の上昇も見込めるでしょう。
これは、最近の乱高下がいかに魅力的な買いのチャンスになっているかを、浮き彫りにしていると言えます。2022年にリリースされるEPの価格が高いため、すぐに広範囲で大幅な価格上昇が見られる可能性は低い一方、2022年の新酒とバックビンテージの両方から厳選されたワインは、以前よりも長期的なポテンシャルを秘めているのです。
カルトワインインベストメントの注目すべき第2四半期の業績(ワイン・サーチャー価格):
シャトー・ラフォン・ロシェ 2012 +13.77% (フランス語)
シャトー・ダルマイヤック 2014 +10.17% +9.71
シャトー・ラロック 2018 +9.71
高級ワインの展望
景気後退はいつまで続くのか?これが多くの人の頭の中にある疑問でしょう。私たちの見解では、今後数ヶ月の見通しはまだ不透明な一方、中長期的には状況は好転し始めると予測しています。
2021年から2022年にかけてのラリーの長さと規模から、価格は2020年初頭よりもはるかに高い水準にあります。その結果、今後数ヶ月はマクロ経済が不透明な背景の中で、不安定な価格推移が続く可能性があります。ボルドー2022EPキャンペーンは、投資に最適の素晴らしいワインをいくつか市場に産出した一方で、この価格上昇が今後のキャンペーンラリーの、火付け役となる可能性を牽制する事になるでしょう。
しかし、現在のマクロ的課題は高級ワインだけに影響を与えるものではないことを忘れてはならないでしょう。高級ワインは、他の多くの主流資産と比べて相対的に安定し、ダウンサイドを防いできた実績があるため、たとえ大きなリターンを記録していなくても、投資ポートフォリオに利益をもたらす可能性があると言って過言ではありません。高級ワインは、リスク調整後リターンの指標であるシャープレシオが、他のいくつかの資産クラスよりも断然に優れています。長期的な見通しはより良好で、過去の低迷期は上昇期ほど長くは続きませんでした。現在の減速がもう少し長引いたとしても、過去の記録からみて巻き返しの勢いは、下落期の勢いのをしのぐ傾向があると考えられます。
このような高級ワイン市場の性質から、低迷期は長期的な投資機会を得るためのチャンスと受け取るべきだと当社は考えています。世界最高級で最も人気のあるワインは希少性が高く、流動性が低いことが多いため、入手は常に困難であるのが現実です。価格が再び上昇に転じるまで待つことは、その間マーケットに出る最高のワインを逃したり、又プレミアムを支払うことを意味するといえるでしょう。


ボルドー
2022年のEPキャンペーンでは、いくつかの新たな長期投資の選択肢が産出されましたが、価格が高いため高価な産地のものより、買いはバックヴィンテージにあるでしょう。
ブルゴーニュ
2020年から2022年にかけてのラリーの長さは、ブルゴーニュの価格があと数カ月で落ち着きを取り戻す可能性があることを意味すると同時に、ブルゴーニュの希少性と名声が長期的な成長の原動力になることが予想されます。
シャンパーニュ
最近の景気減速は、希少なヴィンテージ・シャンパーニュを買うチャンスを広げる可能性があります。
ローヌ
不安定なマクロ環境下でも、市場の安定性は維持されるでしょう。
イタリア
この1年で相対的価値は向上しました。その中でも最良のワインは、さらに需要が高まる可能性があります。
他の地域ROTW
スペインとチリには素晴らしい成長のポテンシャルがあり、多くのトップワインの手頃な価格も現在の環境では魅力的です。
アメリカ
米国の景気回復と英ポンド/米ドルの為替レートは、米国産ワインの競争力を高め、需要拡大につながる可能性があるでしょう。