高級ワイン投資とワイン収集における醍醐味のひとつに、その選択肢の多様さがあることが考えられます。ひと昔前までは、ワイン投資といえばボルドーの1級畑のワインをアンプリムールがリリースされる時期に購入し、価格が上昇するのを待つというのがお決まりでした。しかし現在ではボルドーの1級畑のワインは、多岐に広がる高級ワイン・ポートフォリオを構成する要素の一つに過ぎません。各ワイン 産地における、それぞれ独自の特徴とパフォーマンスの傾向を念頭におき、投資家は現在の市場環境と自身の投資目標や優先順位に基づいて、各産地への配分量・タイミングを選択する必要があると言えるでしょう。
長期パフォーマンスの変動カルト・ワイン・グローバル・インデックスと地域別インデックス

ボルドー
この世界的に有名なワインの産地は、高級ワイン投資の中核を形成しており、新たなヴィンテージのリリースに向けて毎年行われるアン・プリムール・キャンペーンは、言わずもがな高級ワイン・カレンダー最大のイベントです。どのワインコレクションも ボルドー1級畑のベンチマーク・ヴィンテージがなければ、コレクションとして完成とは言えません。この有名ワイン産地における、世界を引き付けてやまない魅力の一つとして、高級ワインのポートフォリオに長期的な安定をもたらすという事実が挙げられます。それは(マクロ環境)・どのように世界情勢が変動しても、需要と流動性のバランスが有利に働き、安定を保つ事に理由があります。今後、ますますボルドーの成長が期待されるといっても過言ではないでしょう。この産地のワイン投資のリターンが高い事の一つに、生産者が品質向上のための努力を惜しまない事があげられます。 シャトー・フィジャック(+121.6%)やシャトー・レ・カルム・オー・ブリオン(+121.6%)においては、このような素晴らしい価格上昇が見られます。さらに、カルム・オー・ブリオン(+148.5%)などで、近年目覚ましい価格上昇が見られています2。相対的な価値は、ヴィンテージの違いによる裁定取引の記録から見て取れることができます。そして他のどのワイン産地よりも 批評家のスコアは、ボルドーワインの価値を決定する上で、重要な役割を果たしていると言えるのです。
ブルゴーニュ
ブルゴーニュワインは、2021年と2022年に重要・供給のオフバランスにより、莫大な利益を記録しました。ブルゴーニュワインはテロワールに基ずく、以下の4段階の格付けシステムを採用しています。グラン・クリュ、プルミエ・クリュ、ヴィラージュ、そして汎地域的な「ブルゴーニュ」。プルミエ・クリュやグラン・クリュに格付けされた畑のワインは、ワイン愛好家から熱烈な支持を集め、その需要は家族経営の小規模生産者の供給量をはるかに上回る傾向にあります。
この地域ブルゴーニュには多くの新進気鋭のワイン生産者が存在し、その卓越たるクオリティーの高さにもかかわらず、それらのワインはまだ比較的低い価格設定となっいます。、これらの生産者は今後数年間、世界のワインコミュニティーの間で注目を浴びていく事でしょう。ブルゴーニュ地方はその多様性と、ブドウ畑ごとのアペラシオンの広さゆえに、難しい産地とされていることも事実です。ブルゴーニュの白ワインもまた、高級ワイン投資における、ポートフォリオでの重要な構成要素になっている事もここに明記する必要があるでしょう。最後にブルゴーニュの価格は近年高騰しているため、分析的なアプローチが今後の成長に向けたこの地域での、最良のワインを見つける最も効果的な方法であると言えるでしょう。
イタリア
イタリアは、近年における高級ワイン市場多様化のトップリーダーとして、その地位を確立し、充実した高級ワイン・ポートフォリオを構成する上でのかかせない要素となっています。イタリアの高級ワイン は、(カルト・ワインズ・イタリア・インデックスで測定される)マクロ経済が不安定であるにもかかわらず、過去4年間の収益率はいずれも着実に改善しています。

近年イタリアワインは、フランスの主要産地に対し優れた相対的価値を提供しています。その長いワイン造りの歴史と、世界的な知名度があるピエモンテやトスカーナで造られるワインの多くは、ブルゴーニュやボルドー同程度の、批評家による採点を得ているにもかかわらず、価格が低い事にも注目すべきでしょう。
シャンパーニュ
すでに世界を代表するスパークリングワインであるシャンパーニュは、近年投資対象としてその地位を確固たるものとしてきました。高級ワインの中でも、特に最大級のリターンをあげている高級シャンパーニュ は、伝統的に季節によりその需要が増減している傾向にありました。しかし、近年ではシャンパーニュの取引シェアは、1年を通して様々な時期に高い水準を維持している事が見て取れ、投資主導の需要が増加していることを示唆しています。
中でもヴィンテージ・シャンパーニュは、極めて安定した投資対象となっており、 自社畑を所有する生産者は、その生産量が少ないことも手伝って、もう一つの優れた投資成長分野としての地位をゆるぎないものとしています。
シャンパーニュとブルゴーニュが最近の成功を牽引
カルト・ワイン・インデックスの2020年1月以降の騰落率

アメリカ
1976年の有名な「パリスの審判」でのブラインドテイスティングで、ナパ・ヴァレーは世界の高級ワインの話題の中心に躍り出ました。その後数十年間 、カリフォルニアの一握りの最高級ワインや、希少ワインが「カルト的ワイン」としてファンを魅了、人気を博してきました。
中でもスクリーミング・イーグル(Screaming Eagle)、オーパス・ワン(Opus One)、ハーラン・エステート(Harlan Estate)などの名前は評論家のお気に入りであり、これらの希少なワインを仕入れることができれば、投資に対して大きなリターンを期待できるといっても過言ではありません。
米国市場内ではコア・グループ以外にも、その影響は拡大しており、特にカリフォルニア のワインは評判の高い出版物・批評家から、100点満点を獲得することが多くなってきています。そしてナパだけでなく、ルシアン・リヴァー・ヴァレー、パソ・ロブレス、サンタ・クルーズ・マウンテンといった他のAVAからも、世界クラス級の高級ワインが生産されています。さらに足を延ばせば、オレゴンのウィラメットヴァレーがあり、こちれの地域はブルゴーニュ品種から造られる、高品質の新世界ワインの産地としての地位を確立しつつあります。
世界その他の地域
高級ワイン投資の世界は近年、急速に多様化してきています。ボルドーは2010年の高級ワイン市場の 約90%を占めていましたが、現在では取引額ベース(Liv-exロンドンワイン取引所)で のシェアは通常40%を下回っています。レスト・オブ・ワールドのカテゴリーは非常に多様化が進んでいます。
ローヌ北部の主要アペラシオンであるコートロティとエルミタージュ、ローヌ南部 シャトーヌフ・デュ・パプなど、ローヌ地方は独自の幅広いマーケットを確立しているものの、このレスト・オブ・ワールドカテゴリーの一つと、とらえられることがままあります。
スペインも同様、投資家にとってとてもエキサイティングな地域です。リオハとリベラ・デル・ドゥエロは、批評家やコレクターから注目を集めており、今後かなりのリターンが見込まれています。ベガ ・シシリア、ピングス、トンドニアなどが その代表格になります。スターワインメーカー、テルモ・ロドリゲス などはいくつかのプロジェクト(レメルーリYJAR)を通じて、スペイン独自のテロワールに光を当てています。
選べるワインの範囲の少なさなどにより、南米ワインのポテンシャルはまだ、推測の域をでていないと言えます。しかしこの地方のワインの質は、近年急上昇を記録し続けており、一流の批評家たちからも注目を集めています。今後は技術・市場アクセスも向上し 、南米のワインは世界の高級ワイン愛好家の間に、広く浸透していくのは間違いありません。