2年間好調だった高級ワインラリーに、今ちょっとした波乱が起きています。Cult Wines Global Indexによると、2023年のワイン価格は1.31%の下落を記録し、すべての地域のインデックスがマイナス圏にあるという事実です。(2023年5月31日現在)。
しかし、高級ワイン投資は長期的なアプローチで行うものという観点からみると、1年と3年でのリターン数値は4.85%と36.95%であるのて、ポジティブであると言って過言ではありません。[1]。
図 1 – 減速を視野に入れる

Cult Wines Global Indexの5年間のパフォーマンス出典は、こちら 2023年5月31日時点のWine-Searcherの価格設定に基づくCult Wines Indicesです。過去の実績は、将来のリターンを保証するものではありません。
価格上昇が持続可能かどうかは、買い手それぞれの判断に委ねられている為、この調整期はマーケット全体のサイクルの健全な一段階といえるでしょう。また、この調整期はワインマーケットへ新たに参入する絶好の機会となり、この時期には新たな買い手が増える事が予想されます。しかし、今年に入ってから、5ヶ月のうちの4ヶ月間でマイナスのリターンを記録しており、今後の見通しを予測するためにも、考えられる原因を議論する価値は多いにあるといえるでしょう。
高級ワイン価格が低迷している理由
2023年初頭にみられた高級ワイン価格の低下の主な要因は、ちょうど価格整理の時期に起きた、自然なサイクルの一環と考えられることです。過去の上昇のペース(2021年1月から2023年1月までの2年間のリターンは+32.85%[2])を考えると、価格が横ばい、または少し下落を記録したこの期間は、ある程度予測範囲だと言えるのではないでしょうか。
2021-2022年のブームに関していえば、ブルゴーニュとシャンパーニュという2大不振の産地が牽引したことが、今起きていることの証拠と言えるでしょう。
また、苦戦した産地でも特定の高級ワインは健闘しており、適切なワインを適切な価格で購入する意欲が衰えていないことを示しています。ローラン・ペリエブリュット・ミレジメとエグリ・ウーリエ・ブリュット・ミレジメは、今年に入ってから22.0%と18.4%(Cult Wines Indicesのヴィンテージ間の平均)上昇を記録しています。[3] また、いくつかのリオハワインとテヌータ・サン・グイドのギダルベルトが大きく上昇しており、現在の状況下で需要が相対的価値を求めていると言えるでしょう。
マクロ経済的要因による影響
しかし、現在のマクロ経済情勢を無視することはできません。高級ワインの実績が、より広い市場の動向と相対的に相関しているとしても、生活費問題、金利上昇、経済成長への懸念が、全く影響しないと考えるのはナイーブでしょう。我々の認識では、2つの主要なマクロの逆風は以下の通りです:
1・金利について
金利が上昇すると、投資志向の強い購入者の中には、金利上昇時に健全な収益が得られる現金や、債券投資を選択する傾向がみられます。高級ワインのような代替資産に使える資金が少なくなれば、高級ワイン価格の低下に影響する要因になるといえるでしょう。
しかし、米国金利と高級ワイン価格の関係を振り返ってみると(Liv-Ex 1000 indexをここではその歴史の長さのため使用)、金利の上昇とワイン価格の下落が必ずしも一致しないことがわかります。このことは、現在の金利上昇が高級ワインのような代替資産の価格に影響をある程度は与えていると考えられる一方、主要な要因であるとは思えないのではないか、というのが我々の見解です。
図2-逆相関はない

2・外国為替レート
英ポンドは2022年秋に新たな下落を記録したものの、2023年には回復しています。6月12日現在、スターリングは米ドルに対して3.74%上昇を記録。ポンド高は Wine-Searcher.comの価格を含むCult Wines Indicesのパフォーマンスに影響を及ぼしています。その結果、ポンドが上昇すると、指数の値が下がる事がわかります。(Cult Wines Indicesはポンドで計算されています)。
図3 – 2023年のこれまでのポンド高推移

現在の見通し
リスク – 高級ワインの短期的な見通しについては、「不確実性」という言葉が当てはまるでしょう。2020年から2022年にかけての上昇の長さと規模から、ワイン価格はまだ2020年初頭よりもはるかに高い水準にあることがわかります。そのため、今後数ヶ月は不安定な値動きが続く可能性があります。
高金利と生活費上昇などの懸念は、今後数ヶ月間回避できないリスクとなる可能性が高い一方、上記の分析から、高級ワインは異なる金利環境でも、パフォーマンスを発揮できる特徴があることがわかります。 英ポンド高は英国以外のバイヤーからの需要の足を引っ張る形になるかもしれません。高級ワインの現物株の多くはポンド建てであるため、米ドルや他の通貨と比較してポンドが上昇すると、その分割高になります。
アップサイド – リスクだけではなく、ポジティブな世界情勢にも注目する必要があります。ほとんどの主要国でインフレが緩和され始めたことにより、今年後半には連邦準備制度理事会(FRB)や、その他の中央銀行がより緩和的な金融政策を行う可能性が出てきました。 規制が緩和されれば現金のフロウの増加により、多くの投資家の間で再び代替資産に目を向けるようになり、あるいはホスピタリティ分野などにおける、自由に使える支出につながる可能性があると考えれます。
結局のところ、現在における世界情勢内でのチャレンジは、高級ワインだけに影響を与えるわけではないと言うことを、忘れてはならないでしょう。実際、多くのエコノミストは、米国経済が2023年後半に景気後退に転じると予想しており、株式市場やその他の金融市場がさらに乱高下する可能性を示唆しています。
このような事実をふまえると、高級ワインが大きなリターンをもたらさない場合でも、他の多くの主流資産と比較して相対的に安定し、リスクヘッジとしての実績が、投資ポートフォリオに利益をもたらす可能性が非常に高いといっても過言ではないでしょう。
高級ワイン投資は長期的な展望で
高級ワインが上昇し、その恩恵を受ける為には、安値のピリオドをやり過ごす準備が大切といえるでしょう。たとえ現在の低迷がもう少し続いたとしても、過去に遡るデータが示すように、高級ワインが上昇するときは急速に上昇し、又その反動は下落の時よりもさらに著し
い上昇になる可能性がある事がわかります。よって、多くの金融資産と同様に、高級ワイン市場のタイミングを正確に計ろうとする試みは、無駄足を踏む行為といえるでしょう。
図4 – 下降局面から長い上昇局面へ
Liv-ex 1000の長期的なパフォーマンス履歴

高級ワイン市場の性質上、低迷期は長期的な投資機会を得るための絶好のチャンスとして、利用する必要があります。世界最高級で最も人気のあるワインは希少性が高く、流動性が低いことが多いため、入手は常に困難です。価格が再び上昇に転じるまで待つ事により、最高のワインを逃したり、さらにはプレミアムを支払うことになりかねません
したがって、我々はこの現在の状況下は、エントリーポイントを見極める為の最高のチャンスだと考えています。短期的な懸念を考慮すると、一部のワインはまだ上昇幅が限定的な価格であるかもしれません。しかし、分析的なアプローチによって、希少なワインを長期的なパフォーマンスの可能性を秘めた価格で入手する、新たな機会を見つけることが可能なのです。
[1] Cult Wines Global Indexは、Wine-Searcher.comの価格設定に基づく。過去の実績は、将来のリターンを保証するものではありません。
[2] Cult Wines Global IndexはWine-Searcher.comの価格設定に基づくものです。過去の実績は将来のリターンを保証するものではありません。
[3] Cult Wines Indicesは、2023年5月31日時点のWine-Searcher.comの価格設定に基づくものです。過去の実績は、将来のリターンを保証するものではありません。
2022年12月に開始されたCult Wines Global IndexとCult Wines Regional Indicesは、Wine-Searcherによる2014年初頭まで遡る過去データにより、世界の高級ワイン市場のパフォーマンスをベンチマーク測定するものです。過去のパフォーマンスは将来の成功を示すものではなく、なおパフォーマンスはGBPで計算されており、他の通貨では変化します。いかなる投資も、資本の一部または全部が失われるリスクを回避できません。ここで表示された結果は、実際の取引に基づくものではなく、カルトワイン投資の顧客に請求される年間管理料(ポートフォリオの規模に応じて2.25%から2.95%)を考慮しておらず、投資家それぞれが保有するポートフォリオで、同様のパフォーマンスを保証するものではない事をご了承ください。